ホームページへ戻る

Helicopter Detailsへ戻る

ダクテッド・テール・ローター写真集＆解説
Ducted Tail Rotors

各地で撮ってきた写真、それと知り合いの方からいただいた写真の中からダクテッド・テール・ローターの写真を並べてみました。 なお、ダクテッド・テール・ローターは、最初はフランスのアエロスパシアル社が特許を取り、使い始めました。アエロスパシアルは「フェネストロン」という商品名で呼んでおります。 この特許は２０年以上経って権利が切れ、誰でも使えるようになりました。そこでOH-1もこれを採用し、「ダクテッド・テール・ローター」と呼んでいます。同じように、アメリカのRAH-66コマンチでも採用し、「ファンテール」と呼んでいます。他にも、ロシアのカモフKa-60/62が採用しましたね。

OH-1 Ninja	EC135	EC120
AS365N2	RAH-66 Comanche

どれも、ローターの上部には垂直尾翼がついています。 そして、ドーファンとコマンチを除き、下部にはベントラル・フィンが付いています。 左端のOH-1は車輪が尾輪式なのでベントラルフィンが尾輪のフェアリングを兼ねていますね。 OH-1は無骨ですね〜 垂直尾翼の後縁は波板外板を使って、外見を気にせず、設計・製造の楽な構造にしています。 それに垂直尾翼が立っている部分、思い切り段差が付いています(笑) 整形の要なしと判断し、製造コストを優先したのでしょうね。 それに比べると、EC135とEC120は複合材で滑らかに整形してあって、キレイですね〜 ドーファンの垂直尾翼にある斜めのつなぎ目は、一体なんなんだろう？ まん中のEC135の垂直尾翼は、ちょっと背が低くて、アスペクト比が小さいですね。 大きさ自体、ちょっと小さめな感じがします。 コマンチが変わっているのは、ローターが左に傾いています。これはシコルスキー社の得意技で、これによって重心許容範囲を広く取ることができます。ただし、これによって操縦は難しくなるのですが、コマンチはフライバイワイヤ方式というコンピュータ化された操縦系統になっており、操縦も極めて容易になっています。

OH-1 Ninja	EC135	EC120
AS365N2	RAH-66 Comanche

さて、真後ろから見てみます。 尾翼に取付角が付いているのがおわかりでしょうか。 後縁が、OH-1とEC135とコマンチは左に、EC120とドーファンは右に寄っています。 メインローターの回転方向が、この中ではEC120とドーファンは逆で、時計回りなのです。 ですから、テールローターから風が出る方向も、OH-1、EC135、コマンチは後ろから見て左側へ出ますし、EC120とドーファンは右へ出ます。 さらには、EC135だけはベントラルフィンも取付角が付けてありますね。 EC120がただの板なのに比べて厚みを持たせてありますし。 上にEC135の垂直尾翼が小さめだと書きましたが、実は、試作機時代のEC135のベントラルフィンは、もっと小さかったんです。 飛行試験の結果、やっぱり効きが足りなかったんでしょう。 今の大きさとカタチに改修されたんです。 垂直尾翼を上に延ばすのも解決策としては考えられますが、それをすると垂直尾翼付根の曲げモーメントが大きくなり、構造上きつくなってきます。 EC135はホリゾンタル・スタビライザの端にもエンドプレートが付いているのに、よほど方向安定の問題があったのでしょうね。 このように、同じように見えても各機種ごとに細かい違いがたくさんあり、その全てに理由があります。 開発にたずさわったエンジニアの苦労の跡が見えてきます。 コマンチなどは、この尾翼の調子があまりに良くなかったようで、最近はこんなふうに改修されてしまいました。 格好わる・・・  さて、次にブレードを見てみましょう。 これはユーロコプターフランス、AS356N2ドーファンの「フェネストロン」。 登場したのは最も古く、１９７０年代。 ブレードは１１枚、等間隔配置で、コード長が小さい。「キーン」という高い音がします。 テールギアボックスを支えるストラットは３本。 こちらが左側面で、空気を吸い込む側。

こちらは右側面で空気を吹き出す側です。

次はユーロコプターEC135の「フェネストロン」。 １９９０年代に登場した新型機。 ブレードは１０枚、コード長はやはり小さい。不等間隔配置になっています。 ブレードを等間隔配置にすると高い周波数のキーンという音がうるさいのですが、不等間隔配置にすることによって周波数を分散し、全体としての音圧を下げることができ、静かになっています。  テールギアボックスを支えるストラットは、テールドライブシャフトが通るパイプを兼ねて１本。静翼（ステータ）を兼ねて１０本が付いています。これにより空気の流れをうまく干渉させ、騒音を小さくしています。 この２枚は右側面で空気を吸い込む側。

こちらが左側面で空気を吹き出す側です。

次はユーロコプターEC120の「フェネストロン」。 これも１９９０年代に登場した新型機。 ブレードは８枚、騒音に配慮した不等間隔配置。 テールギアボックスを支えるストラットは、ステータを兼ねて７枚、テールドライブシャフトが通るパイプを兼ねて１本。 左側面の吸い込み側。

右側面の吹き出し側。

さて、OH-1です。 １９９０年代に登場した新型機。 ブレードは８枚、騒音に配慮した不等間隔配置。他機種に比べるとコード長が長く、厚翼になっています。軍用機ゆえの耐弾性にも考慮している、とも思われます。 ブレード付け根に、ブレード交換用のボルトが見えます。 下の写真が左側面で空気を吹き出し側。向かって右側が機体の後ろ側ですが、ダクトのリップの「Ｒ」が変化しているのがわかります。前進飛行中の効率を考えているものと思われます。 よく見ていただくと、他の全ての機種でも同じようにダクトリップのＲは変化させてあります。

こちらが右側面、吸い込み側。

これはドーファンの最新型、型番が変わってユーロコプターEC155の「クワイエット・フェネストロン」。 ブレードは１０枚、不等間隔配置。これまでのドーファンに比べると、ブレードのコード長もやや幅広になりました。

EC155のクワイエット・フェネストロンはドーファンN3にもオプション設定されており、静岡県警のドーファンN3が採用しています。 その飛行中の音を聞くことができましたが、確かにキーンという耳障りな音が無くなり、OH-1とそっくりの音になっていました。 あの「キーン」という音を「ドーファン・サウンド」と呼んで好む飛行機マニアの方もいますが、ヘリとしては静かなほうがいいに決まってますからねぇ。 こちらがAS365N3の写真です。

ボーイング・シコルスキーRAH-66コマンチの「ファンテール」。 残念ながら機体左側面、吹き出し側の写真しかありません。 右側面の写真はこちらに。 テールトランスミッションを支えるストラットが面白い配置をしています。 おそらく、ステルス性を狙っているのではないかと思います。 後方ダクトとテールギアボックスの間に、細いハイドロらしき配管が２本、渡してあるのがわかります。 これはいったいなんだろうか？ テールコントロール系のハイドロ配管を、生存性向上のために別ルートで通しているのだろうか？

ブレードは８枚、等間隔配置に見えます。 下の写真でよく見ると、ブレードがたがいちがいに配置されているように見えます。 これが騒音低減のため、と思います。

本ページで使用したコマンチの写真は、小説家の大石英司氏が１９９８年にファーンボロ航空ショーにおいて撮影されたものであり、著作権は大石英司氏にあります。 大石英司氏のホームページはこちらです。 本ページでは大石氏の許可を得て、使用させていただきました。 ありがとうございました。

2002.10.10　作成
2002.11.15　追記
2003.05.31  追記

ホームページへ戻る

Helicopter Detailsへ戻る